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【ニューヨーク30日共同】経営危機の米自動車大手クライスラーは30日、再建策の交渉期限を迎えた。主要米メディアによると、焦点の債務削減について一部の債権者が拒否したため、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻(はたん)する可能性が高まっている。一方で、イタリア大手フィアットとは資本提携で最終合意する見通しだ。
破産法を申請すればビッグスリー(米大手3社)では初めて。クライスラーの経営は重大局面に入った。
ロイター通信によると、オバマ大統領は30日正午(日本時間5月1日午前1時)に声明を発表する予定。クライスラーのブランド価値低下への懸念から、破産法申請を回避する余地も残されている。
同社とフィアットは提携合意を同日発表の見込み。フィアットの技術・商品力を頼りに再建を図る。
米政府は29日、クライスラーが抱える債務69億ドル(約6700億円)の削減をめぐり、当初案より削減額を2億5000万ドル減らす新たな案を提示し、債権者団に受け入れを迫った。しかしヘッジファンドなどがこれを拒否したため、破産法による法的な保護・管理下での債務圧縮に傾いたとみられる。
オバマ米大統領は30日正午(日本時間5月1日午前1時)、米大手自動車メーカー、クライスラーが米連邦破産法11章の適用を裁判所に申請すると発表した。
 クライスラーは申請後、裁判所の管理下で巨額の債務削減を進める一方、近くイタリアの同業大手フィアット資本提携を結び、米政府の追加支援も受けながら経営危機からの早期脱却を目指す。
 オバマ大統領は、「破産法の適用は後ろ向きではない。米政府はクライスラーを支えていく。フィアットとの提携で生き残り、成功するはずだ」と述べた。
 米政府は、破産法適用を回避するため、クライスラーに同日までに人件費や債務の大幅削減を決めるよう求めていたが、一部債権者の同意が得られなかった。昨秋に起きた米金融危機は米新車市場を急速に冷え込ませ、米自動車大手3社(ビッグスリー)の一角が初めて破産手続きに追い込まれる異例の事態に発展した。
米自動車大手クライスラー連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請は、部品メーカーや販売会社の連鎖破綻などを通じ、米経済に「壊滅的な影響を与える」(エコノミスト)恐れがある。破綻に伴う失業者は、他業界への波及も含め米国全体で100万人単位に上るとの試算もあり、金融危機にあえぐ米景気が一段と悪化しかねない。
日本の自動車メーカーも、同社と取引が重なる部品供給元などが打撃を受けると、影響は避けられない見通しだ。同社と取引のある国内部品メーカーにとって、納入した製品の代金を回収できない最悪の事態を招く可能性がある。クライスラーの下請けが連鎖倒産すれば、共通の下請けを使う日本企業の米国内での部品調達に支障が出る恐れもありうる。
米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は昨年11月、ビッグスリー(大手3社)の一角の破綻を引き金とした自動車産業の「崩壊」で、3社の生産規模が半減すると、失業者は関連産業などを含めて全米で1年間に250万人近くに膨らむと試算。
3社で働く約24万人に加え、部品メーカーなど関連業界で約80万人、景気悪化の影響で140万人超が新たに職を失うとした。
昨年9月に米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻し、金融危機が深刻化。「クライスラー・ショック」で個人消費や企業投資がさらに冷え込む可能性がある。