インフレに備えて

財務省の2011〜13年度歳出入の試算をまとめによると、経済成長と歳出削減努力を織り込んだケースでも歳出入の差額が13年度には58.4兆円に達し、民主党マニフェストが財政を圧迫する構図が改めて鮮明になった。 歳出と歳入の差額が58兆円ということは、約40兆円の歳入に対して、1.5倍に近い。完全に破綻状態だと言えるし、将来日本はハイリスクカントリーになる。日本人の心理からすると「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という状況だと私は思う。
誰も渡らないという状況になったら、日本人の強い集団心理が作用して、一気に国債以外のモノへ流れる可能性も高い。国民は国債から逃避した後、どこに行けばいいのかを考えてみたとき、政府の打ち手は預金封鎖ハイパーインフレの二つである。一方、生活者にとっては三つの避難場所がある、と私は考えている。一つは海外に資産を移す、あるいは外貨預金をすること。つまり国際分散である。二つ目は金融商品以外のモノに転換すること。例えば不動産とか金などだ。三つ目はタンス預金である。 タンス預金の弱点はハイパーインフレである。日本政府もいよいよ打つ手がなくなったときは、800兆円という借金が意味をなくすくらいのハイパーインフレを起こす可能性もある。それだけ貨幣価値が下がれば、当然タンスに置いてあるお金の価値もなくなってしまう。 投資の国際分散も預金封鎖(引出制限)には弱い。日本政府が預金封鎖をするとき、どこまで対象を広げるかは不明だが、日本国外に移動したから安全というわけにはいかない。残る一つ、金融商品以外への投資だが、これは不動産や金(貴金属)など、通貨とは異なるものに移しておくことだ。借金して不動産を買うなら固定金利にしておかないと、ハイパーインフレの時には金利も急上昇するので注意しなくてはいけない。ほぼ絶壁の真上まで来てしまった日本、そう考えると私は暗澹(たん)たる気持ちになる。