光と影

前に三越で大学を卒業し、現在院展にて活躍している日本画家よるグループ展。会の命名平山郁夫氏。57点出ていたがどれも色ずかいや画題が平山郁夫もどきで、最高の学位の出た人の作品で絵描きの世界とはこんなものかとがっかりしたことがあった。きょう図書館で湯原かの子の「絵のなかの魂」を一気に読んでしまった。日本画田中一村の生涯を書いた本で東京美術学校(現・東京芸術大学日本画科に入学。 同期に東山魁夷橋本明治らがいる。しかし、家の事情により中退する。神童と呼ばれ、天才画家の一村の人生の苛酷、画壇からは正当な評価を得られず、財産も家族も帰るべき故郷もなく、生来の妥協を許さない性格が、孤立に追い込んでいき、極貧の生活にたえ、孤独のなかで亜熱帯の動植物を描き続けた。画壇からは忘れ去られた異端の日本画家、生前はまったくの無名でありながら、死後10年たって人気を得てきた。貧困でなければ東京芸術大學を出て、若いときから光のあたる場所で生きることもできたろうが、物事には光と影があるように妥協をしない純粋の絵は描けなかっただろう。