日本経済の繁栄と消えた絵

1987年から1990年の4年間、日本に輸入された海外の美術品はその当時世界中で売買された美術品の半分以上だと言わている。その中でも美術オークションで落札された中で最も高価で、そのために最も有名になった肖像画ゴッホの「医師ガシェの肖像」である。生前はその才能が認められず貧しさに苦しみ、自ら37歳で悲劇的な人生を絶った画家である。世界で最も有名なな油絵「医師ガシェの肖像」が、今何処にあるのか知っているのが、一握りの人しか知らない。それはこの絵を1990年春に落札したのが日本人実業家であり、そのオークションからほどなくして日本経済が崩壊したために、その人物の会社の経営が破綻し、彼の美術コレクションが彼の手を離れ、担保として押さえられるという憂き目にあい、複数の金融機関の手を経て、今ではアメリカンのコレクションに入っているといわれている。世界最高の価値ある美術品が日本に渡り、そしてその後消えてしまった。歴史的に優れた美術品はそのときどきに、世界で最も富む者のところに集まると言われている。1989年12月29日には日経平均株価が3万8915円という値がついた。そのころの日本に、世界の高価な美術品が集まっても不思議ではなかった。